労働基準監督官の司法処分とは?(Ⅹ)

●本件概要

 労働基準監督官には、行政権限と司法権限があると思いますが、実務上、その2つは具体的にはどのように行使されるのか、具体的に監督官が行政指導の場合と司法処分の場合について教示お願いいたします。

●本件の解説

 そこで、東京労働局S労基署監督官の労働時間に係る労基法違反の事例を用いて解説したいと思います。
 まず、行政指導では次の是正勧告書の交付のみです。

●是正勧告書(行政指導)

法条項等 違 反 事 項 是正期日
労基法第32条 時間外労働に関する協定届がないにもかかわらず、
法定労働時間を超えて時間外労働を行わせていること。
即時

●送致書(司法処分)
 次に、司法処分では次のとおり捜査書類が数百頁にも及ぶことになります。

■労働基準法違反
 A株式会社(法人:両罰規定)
 労基法第32条、労基法第119条第1号、労基法第121条第1項
 B取締役(違反行為者:従業者)
 労基法第32条、労基法第119条第1号

■犯罪事実
 被疑者A株式会社は、東京都○○区において不動産販売業を営む者
 被疑者B取締役は、同社の労務管理全般を統括する者であるが平成○年○月○日から同年○月○日までの間、法定の除外事由がないにもかかわらず別表記載のとおり労働者○○ほか○人に対し、1日8時間を超えて最少1時間50分から最大4時間30分の計100時間40分にわたり労働させたものである。

 これに、証拠金品総目録、書類目録、捜査報告書、被疑者供述調書、参考人供述調書、捜査事項関係照会書、同回答書、任意提出書、領置調書、前科照会書、身上調査照会書、法人登記簿謄本などの捜査書類に加え、タイムカード、賃金台帳、就業規則、超勤命令簿などの関係証拠物を検察官に送致することになります。

 

■その他 事例紹介

■労安法違反が不起訴とされた事例 ■過重労働で書類送検された事例
■熱中症で書類送検されたが構成要件に疑義のある事例 ■プレス災害で任意捜査に応じず逮捕された事例
■賃金不払で労基法違反でなく最低賃金法違反で送検された事例 ■法令違反を否認したにもかかわらず労基法違反で送検された事例
■機械故障時の事後安全対策の不備で労安法違反で送検された事例 ■退職労働者が申告した場合の労基署の対応は?
■労働災害発生3週間後の労働者死傷病報告書の提出は労安法違反?
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