過重労働で書類送検された事例(Ⅱ)

●本件の概要

 東京労働局過重労働撲滅特別地策班(通称「かとく」)は靴販売チェーン大手のエー・ビー・シー・マート、担当役員及び店長2人を、ディスカウントストア大手のドン・キホーテ、執行役員3人及び店長5人を労基法違反(労働時間)の疑いで東京地検に書類送検しました。
 送検容疑は、両社とも正当な除外事由なく、労使の36協定で定めた残業時間を大幅に超えた時間外労働を行わせた疑いによります。
 両社は、全国の複数店舗が是正勧告を受けたにもかかわらず、是正改善が進んでおらず、悪質であるとして司法処分に踏み切ったといいます。

●送検法条等

●労働基準法違反

・エー・ビー・シー・マート(事業主:両罰規定)
 労基法32条、労基法119条1号、労基法121条1項
・担当役員、店長ら3人(従業者:違反行為者)
 労基法32条、労基法119条1号、刑法60条

 

■労働基準法違反

・ドン・キホーテ(事業主:両罰規定)
 労基法32条、労基法119条1号、労基法121条1項
・執行役員3人、店長ら5人(従業者:違反行為者)
 労基法32条、労基法119条1号、刑法60条

●本件の解説

 本2件は、店長らが労基法上の使用者として違法な時間外労働を労働者に行わせた刑事責任を、担当役員や執行役員は使用者として店長らが違法な時間外労働を労働者に行わせた事実を認識していたにもかかわらず、それを放置した刑事責任を、また、両社は事業主として、担当役員又は執行役員らの法令違反を防止すべき措置義務を講じなかった刑事責任を問われたものと解されます。
 また、本2件は、両法人が罰金50万円、役員及び店長らは全員起訴猶予とされたが、これは企業に対する長時間労働の削減に向けた取組み強化を促す行政及び司法からの警告であって、今後は法人だけでなく、法令違反を犯した従業者も刑罰を科せられていくものと思われます。
 なお、本件のように、複数の者が共謀して違法行為を行った場合は、刑法60条の共同正犯の規定が適用されます。

 

■その他 事例紹介

■労安法違反が不起訴とされた事例 ■熱中症で書類送検されたが構成要件に疑義のある事例
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