賃金不払で労基法違反でなく最低賃金法違反で送検された事例(Ⅴ)
●本件の概要
Y労基署は縫製業の個人事業主を最低賃金法違反の疑いで、Y地検に書類送検しました。
事件概要は、縫製業を営む事業主が経営不振から労働者への賃金不払いを起こし行方をくらまし、所在不明となったため、事業主の所在捜査の一環で居住地のN市及びN警察署、主要取引先のY金融機関等に捜査照会を定期的に行った結果、N警察署に運転免許の更新手続きに姿を現した旨通報を受け、現在の居住地が判明しました。
そのため、現居住地を管轄するT労働局に捜査嘱託を行い、事業主の取調べ結果を踏まえ、犯罪発生地を管轄するY地検に書類送検した結果、極めて無責任で悪質であるとして個人事業主(従業者)が略式起訴され、罰金刑が確定しました。
●送検法条
●最低賃金法違反 ・個人事業主(事業主:両罰規定) |
●本件の解説
賃金不払における労基法違反と最賃法違反の取扱いについては、現在、労基法違反の罰則は30万円以下の罰金で、最賃法違反の罰則は50万円以下の罰金と最賃法違反の罰金が高いことから、厚労省と検察庁との申合せにより平成20年7月以降、賃金の全額不払は最賃額の支払も全くないことから最賃法違反で、賃金額の一部不払は労基法違反として検察庁に送検することとされたものです。
また、新聞報道などで、最近は最賃法違反での書類送検が目立つのは、賃金不払事件のうち、賃金の全額不払事案が多いことによるためです。
また、賃金不払を起こした使用者責任を放棄し、所在をくらますことは事業主として無責任かつ悪質であることから、労基署は「逃げ得は許さない」という姿勢で対処しており、公訴時効が完成するまでの間、定期的に市町村、警察署、金融機関及び取引先等に捜査照会などを行い、所在確認に努めています。
なお、本件の公訴時効は、刑事訴訟法250条2項で賃金の所定支払日から起算され3年間となります
■その他 事例紹介