法令違反を否認したにもかかわらず労基法違反で送検された事例(Ⅵ)
●本件の概要
水戸労基署は平成24年10月、茨城県K市の和菓子製造のH製菓と男性会長、女性社長を労基法違反(休日)の疑いで水戸地検に書類送検しました。
送検容疑は、平成22年8月から翌年8月末までの間、男性従業員に対し36協定の締結、届出をせず法定休日56日のうち3日しか休日を与えず、休日労働を計53回させたというものです。
従業員は「製造本部長」という役職に就いていたが、仕事は製品の出荷管理等であって、社員の人事権などは付与されていませんでした。
平成23年8月末帰宅後に倒れ、翌日心室細動で死亡し、その後、過労死として労災認定されました。
男性会長と女性社長は「労基法の規定が一部除外される管理監督者に当たる」として送検容疑を否認したが、水戸労基署は「仕事は出荷管理等に過ぎず、事業主と一体的な立場にない」と判断したものです。
●送検法条
●労働基準法違反(休日) ・H製菓(事業主:両罰規定) ●女性社長(違反行為者:従業者) 労基法35条1項、労基法119条1号、刑法60条 |
●本件の解説
男性会長と女性社長は、死亡した従業員が労基法第41条第2号にいう「監督若しくは管理の地位にある者」とする旨を主張し、水戸労基署の違反容疑を否認したが、同署の調べによると、従業員には製造本部長という名称が付されていたが、その仕事は製品の出荷管理等であって、従業員の採用、配転、賞与査定などの人事権を有しておらず、実態は他の一般労働者と違いがないとして書類送検に踏み切ったものと解されます。
本件の男性会長と女性社長のように、労基署の違反容疑を否認するのは差し支えないが、その主張に合理性、正当性がなければ否認しても労基署は法令違反があるとして書類送検する上、地検への情状意見も「否認の上、反省もない」とされ、通常、厳重処分されたいと厳しいものになると解されます
■その他 事例紹介