労働災害発生3週間後の労働者死傷病報告書の提出は労安法違反?(Ⅸ)
●本件概要
当社の部品工場内で、従業員が高さ3メートルの作業通路から転落し、頭部打撲などで救急搬送され、医師の指示で入院し7日ほどで退院しました。
その後、事後処理などで所轄労働基準監督署長への死傷病報告書の提出が約3週間経過後に提出したところ、監督官から「この程度の労働災害なら、もっと早く報告書の提出はすべきで労災かくしではないか」と言われ、指導票で「今後、このようなことがないように」と行政指導を受けたが、当社としては労災かくしの意図など全くなく、単に労災発生後の事後処理に手間取り、報告書提出が遅れただけであり、労働災害の発生後、具体的に何日以内に報告書の提出義務が課されるのか教示お願いいたします。
●関係法条
●労働安全衛生法第100条(報告等) 1 厚生労働大臣、都道府県労働局長又は労働基準監督署長は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、事業者、労働者、機械等貸与者、建築物貸与者又はコンサルタントに対し、必要な事項を報告させ、又は出頭を命ずることができる。 ●労働安全衛生規則第97条(労働者死傷病報告) 1 事業者は、労働者が労働災害その他就業中又は事業場内若しくはその附属建設物内における負傷、窒息又は急性中毒により死亡し、又は休業したときは、遅滞なく、様式第23号による報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。 |
●本件の解説
労働基準行政の時間的速度を表す用語は、早い順に「直ちに(直ぐに)」、「すみやかに(できるだけ早く)」、「遅滞なく(正当な理由があれば若干の遅れは可とされ、通常1か月以内)」の3種類があり、労働者死傷病報告書の提出については、「遅滞なく」とされています。
労災かくしとは、事業場内外で就業中の労働者が休業4日以上の労働災害に被災した場合、事業者は所轄労働基準監督署長に遅滞なく、報告義務が課されているにもかかわらず、報告書を提出せず、労災発生の事実を隠蔽することをいいます。
労安法上、報告書の提出は、「遅滞なく」であり、報告書の提出に当たって、いつまでという時間的期限は設けておらず、4日以上休業見込みの労働災害については、遅くとも1か月以内に報告すれば足りるものと解されます。
■その他 事例紹介